さぁ野郎ども、巻いて巻いて巻きまくれ!
という掛け声が聞こえたような、聞こえてないような……。
前夜発、8/12-14で、お近くの山岳会「さがみ山友会」の北ノ又川本流遡行に参加してきた。メンバーはKさん、Mさん、私U島の3名。当初は去年、増水で敗退した八久和川の予定だったが、私の法事が重なってしまい日数が取れず転進。
そうこうしていると、直前に台風15号が発生し、山行が危ぶまれる事態に……。転進先として、地理的に少し上にあって台風の影響が少なそうな広谷川・御神楽沢奥壁本谷ルンゼが候補に出てきた。直前まで悩んだが、とりあえず北ノ又川の駐車場まで行って考えましょう、ということで銀山平Pへ向かう。
着いてみたらそこまで増水はしておらず、天気も持ちそうだったため、当初案どおり北ノ又川本流を遡行することに。駐車場から見えた中ノ岳の雪渓(下山後に一つ右側だったことが判明)を眺めつつ準備を始め、林道をしばし歩く。一旦坪倉沢に入った後、本流へ。8:15頃入渓。しばらくは河原歩きが続く。思ったほどアブも多くなく、快適に遡行する。
小一時間ほどで箱淵に着く。ここで沢は右に90度屈曲する。泳いで突破している記録もあるが、気温、水温ともに低く、誰も箱淵を泳ごうなんて思うわけもなく、冒頭の文章に戻るのである。
箱淵を巻いて沢に戻り、しばらく進むと滝ハナ、芝、大ビラヤス、坂倉と各沢との出合があり、初日のテン場予定のシッカイ沢に至る。余裕で行けると思っていたが、高巻きも多く、テン場到着はギリギリだった。水流を進めばもう少し早かったと思うが、いかんせん水温が低すぎて、水流に入る気が起こらない。
私は下がネオプレン(3mm)のタイツ、上がフラッドラッシュで、状況によってモンベルのフロートベスト。短時間なら冷たさは感じないが、長時間だとやはり多少は寒い。途中、胸まで浸かることもあり、皆、声にならない悲鳴を上げていた。ただ、稜線に出てからの下山は暑いので、こういった沢の場合、ウェア選択の難易度が高いと感じた。
シッカイ沢出合のテン場は快適で、薪も多く、盛大な焚き火で暖を取れた。Mさんの牛丼で腹を満たし、毎度、酒だけは人数以上分持ってくる我々。今回はジェムソンとバランタインで、図らずもウイスキー祭り。
翌朝は4:30起き。Kさんが前夜の焚き火を再点火してくれたので、それほど寒くはない。明太子マカロニパスタで腹を満たし、本日の寝床である中ノ岳の避難小屋を目指す。
朝のうちは気温も水温も低く、濡れるのを避けた。しばらくは穏やかな景観が続くが、次第にゴルジュ地形となってくる。側壁の節理が美しい。巻きを何度か経ると、目の前にどでかいスノーブロックが現れた。緩い斜面にかろうじてとどまっている巨大なブロックだが、幸いにも沢床側に傾いており、山側を通過することができた。
途中、岩の上部がフラットになっている箇所があり、非常に歩きやすく快適に進める。
腰上まで浸かる小滝をいくつか越え、ヤブを漕ぎ、巻いては降りを繰り返していると、段々と暑くなってきた。きれいな淵で首まで浸かる私。非常に気持ちいいが、それでも10秒くらいが限界。
昼前には最初の雪渓が現れた。ここはつながっており、上部を快適に歩くことができた。しかし、この後ズタボロの雪渓が何度も出てくるとは、まだ誰も知らんや、である。
乗ったりくぐったり、脇を通ったりと、もう雪渓はお腹いっぱいです、となった頃、「これ、中ノ岳の避難小屋にヘッデンなしで到達するのは難しいかも」となり始める。とりあえず雪渓だけは抜けきって、適地があればそこでビバークしようということに。
あとは稜線までルンゼ状を詰めるだけなので、ヘッデン登攀するか、お座りビバークかを相談する。
ルートも明瞭なので、このメンバーなら大丈夫だろうとヘッデン登攀を継続し、もし途中に適地があれば、そこでビバークしようということに。
そして、2段ほど登ったところに、それはあったのである。二人が入れる岩室と、一人が完全にフラットに寝られる適地が。水場もそばにあり、落石の影響も少なそう。登る気満々だった我々は、そこでザックを下ろしたのであった。
焚き火こそできなかったものの、快適なビバーク適地だった。その日の夕食は私が担当。麻婆麺に豆腐と温泉卵というメニュー。生卵、厳重にパッキングはしていたものの、多分割れているだろうなと半分諦め気分で開けたら、なんと無事だった。というわけで、麻婆豆腐麺+生卵から作る温泉卵のせ。
翌朝はこれまで同様4:30起き。Mさんの具沢山うどんでたらふく食べて、稜線までぐいぐいと高度を上げる。かなり急なので高度はどんどん上がり、稜線が近づいてくる。途中、広い台地があったが水場がなかったので、やはりビバーク地はあの岩室が正解だったようだ。
そうこうしているうちにルンゼは源頭部の様相を呈してきて、草付きになり、とうとう稜線に飛び出した。
少し先には避難小屋も見えている。稜線を歩くこと5~10分ほどで避難小屋着。中ノ岳避難小屋はとてもきれいで、手入れが行き届いている小屋だった。この先の越後駒ヶ岳までは3時間以上の行程があるので、ここで大休止。
そして、ここからが長かった……。
中ノ岳〜越後駒ヶ岳の稜線は手入れされているのだが、谷側には刈った笹が堆積しており、右側に寄りすぎるとそのまま崖下まで滑落しかねないので気を使う。何度もアップダウンがあり、ギャップも多く、雨じゃなくて本当に良かった。
越後駒ヶ岳は縦走路から少し離れており、山頂に続く分岐にザックを下ろし、空身で向かう。クソ重いザックを下ろすと、まるで羽が生えたかのような身軽さ。このまま銀山平まで空身で下りたくなった。
越後駒ヶ岳には13:20に着いた。中ノ岳から4時間弱くらいか。
越後駒のピークはガスってはいたが、中ノ岳の方で十分景色は拝んだので早々に下る。次なる目的地は駒の小屋だ。
駒の小屋、上から見ているとすごく立派で、「有人小屋じゃない? もしかしたらコーラとかあるかも?」と半分冗談で言っていたら、ほんとに有人小屋だった(時期限定)。
ここで、お金を車に置いてきたことに気付く我々。
「もしかしたらPayPay使えるかも」という我々の儚い夢は叶うことなく、「現金のみ」だった。ところが、Kさんの問いかけが良かったのか、我々があまりに不憫だったのか、あるいはその両方か、なんと小屋番の方にコーラを奢っていただいたのである。
過去一美味くて、ありがたいコーラだったことは間違いない。冗談抜きに、そのコーラで急回復したように思う。聞くと、その小屋番の方、過去に仲間とオツルミズにワンデーで挑み、21時頃にまさにこの小屋に着いたという猛者だった。
そして、小屋から5分ほどの所にある水場が、オツルミズの源流だそうで……。
ここからはちょっとした登りはあるが、基本は重力に身を委ねひたすら下る。
道行山以降は、道が少し悪くなる。対岸の林道に合流し、目の前を流れる北ノ又川本流に当たった。
さて、橋はどこにあるのかな?
と探していると、どうやら橋はなく、イタチの最後っ屁のように渡渉が必要だった……。そして河原に降りた途端、アブの猛攻撃。たまらず虫除けを、これでもかってくらい吹きまくる。そして、どうも元の林道に戻るためにはヤブ漕ぎが必要で、まさか最後の最後でヤブ漕ぎをするとは思いもよらなかった。
なんとか最短距離でヤブを抜け、17:15には林道に戻り、白銀の湯の営業時間にも間に合った。
3日ぶりの風呂は、うめき声が出るほど気持ちよかった。外の浴槽から稜線を眺めると、「あぁ、あそこを歩いてきたんだ」と、なかなか感慨深いものがあった。
今回の北ノ又川本流遡行、お盆の山行としてはこれまでにない充実ぶりだった。ハードではあったが、こうして記録を書いている今でも情景が蘇ってくる。何より、いい仲間と一級品の沢を堪能できたのが良かった。私のそれほど多くない沢山行の中でも、一、二を争うほど思い出深い山行になった。
さがみ山友会のKさん、Mさん、ありがとうございました。
期間:2026年8月12日(水)〜14日(金)
メンバー:さがみ山友会 Kさん、Mさん、U島(3名)
文:U島



















