2024/9/7-8 岳沢〜奥穂南稜〜ジャンダルム〜天狗沢下降

W・ウェストンと上条嘉門次から遅れること、112年と14日、いにしえのルート奥穂南稜に行ってきました。メンバーはI井、A田、U島の3名。

島々から徳本峠を通り明神へ入り、そこから岳沢に入ったウェストン達一行、一方、我々は上高地から岳沢に至るルートです。

元々は岳沢小屋に泊まり奥穂南稜に向かう計画でしたが、紆余曲折あり、最終的にテント泊になりました。宿泊予約の熾烈な競争を勝ち抜いたのですが、小屋泊はまたの機会に、ということで。

初日は移動日なのでのんびりと上高地を出発し、河童橋(10:25)、岳沢分岐(10:41)、風穴(11:13)、その後、2200m付近で岳沢を横断し、その先の岳沢小屋についたのが、12:45。この日の予定は取り付きの偵察だけなのでテントを張ってまずはビールで乾杯。

軽く準備して南稜の取り付きへ偵察に向かう。取り付きへは小屋とテント場の間の沢(岳沢・滝沢とも言う)を詰める。小屋から500mほど、標高差は170mほどです。例年、9月の岳沢は雪渓が残っており、シュルンドがある場合は手前で雪渓を降り、雪渓と岩稜との間を進む必要があります。今年は雪渓はまったく残っておらず、沢床に雪の塊が残っているだけ、、雪不足が窺い知れます。

取り付きまでは奥の滝を目指して歩くだけですが、大きな岩であっても動くので踏む場所は注意が必要です。また途中にはケルンもあり自然と取り付きへ導いてくれます(ただし明るければ・・[後述])

見事に発達した柱状節理。右側の大滝は吊り尾根の雨水を一手に受けるらしく雨の後は滝が出現する

取り付き、雪渓がある時の記録と今回とでは状況が大きく違っていて、雪渓がある場合だとかなり上からのスタート、今回はほぼ沢床からのスタートのようです。
偵察を終え、後はビールを飲んだり、ビールを飲んだり、ビールを飲んだりと思い思いに過ごす。小屋はそれなりに賑わっていた。

翌朝、4時起きで暗いうちに出発。準備していると別のパーティが横を通っていった。
昨日、偵察したというのにヘッデンを点けているとはいえ、やはり暗いと分かりずらい。そして正常性バイアスとは怖いもので、取り付きまでは右に沢床を見ながら登るのですが、どうも途中で左に寄りすぎていたのに気付かず、沢床が右にあるから大丈夫、ケルンを通らなかったけど暗いから見えてないだけと思い込み左に寄りすぎてました。軌道修正して5:00頃取り付き到着。明るくはなって来ているけどヘッデンはそのままでスタート。

取り付きから少し登ったあたり。手足は豊富

ロープは出さず、正面の左側、草付が所々にある階段状の岩場を登る。手足ともしっかりとしたホールドがあるので問題ないが、浮き石が多いため落石は厳禁。逆にロープを出すと落石を誘発させるので危険かも。ここを超えた後、2箇所ほどすこし登攀要素のある小滝を超える。その後は南稜ルンゼとよばれるルンゼ状の沢の登る。この辺りから上を見るとモノリス岩が顔を出す。南稜ルンゼの途中から左、中央、右とルンゼが分かれる。我々は中央ルンゼを進みましたが、果たして、、ホントに中央ルンゼだったかは分かりません(笑。何しろ藪まみれでルートが釈然としないのとトレースが入り交じっており、分かりづらいです。

南稜ルンゼと呼ばれている箇所

稜線はハイマツ帯。南稜は随所にハイマツ帯が出てきます。そうこうしているうちにモノリス岩に着く。下から見上げると尖っているモノリス岩も近くでみると単に斜めに突き出てる岩でした。

クライマーに毎シーズン踏みつけられるハイマツが不憫だな。上の方にぴょこんと突き出てるのがモノリス岩

次がトリコニー1峰、狭いチムニー状の箇所を奥まで進み、右側の岩に上がった後、通ってきたチムニーを跨ぐ。次がトリコニー2峰。トリコニー3峰はルートから外れているためパス。そこからしばらくは岩稜歩きが続く。トポや昔の記録ではナイフリッジとなっているが、えらく鈍なナイフでなんなら歯の上を歩けるくらいだった。最後の”ナイフリッジ”の後、懸垂下降 or クライムダウンの箇所があるが結局クライムダウンで降りた。後は南稜の頭まではガレ場歩き。10分ほどで南稜の頭に到着(8:55)。まったく難しくはないけども標高が高いので息が切れる。

この狭い箇所を進む。奥で右側の壁沿いに上に上がる

多くの記録に出てくるフォトスポット。股関節が固い人はたぶん地獄

こういう感じの簡単な岩稜帯が続く

そこから10分ほど歩き、奥穂の祠に 9:10 に着いた。奥穂の祠で休憩した後、午後の天気がいまいちな予報の為、下降を急ぐ。天候次第で一般登山道で下山するか、当初の予定どおりジャンダルムに登り、天狗のコルから天狗沢を下降するか検討したがなんとか持ちそうなので予定通りジャンダルム方面へ進む。天狗のコルまでは一般登山道なので特にコメントはなし。

奥穂の祠にて。

ジャンダルム基部(10:15)、ジャンダルム(10:30)。今回、ジャンダルムに奥穂側から登ったが、普通は上高地側をトラバースで進む。すれ違った登山者が玉石混交だな、と思っていたら案の定ジャンダルム付近で滑落事故があったようだ。

ジャンダルムを登るI井さん。登る姿を

天狗のコルに12:00着。今回、天狗沢を下降するのは2パーティだけかと思い、落石が怖いので後続パーティをジャンダルムで見送り、我々は後続で下ろうとしていると、、、時間的・体力的に無理と判断した西穂ー奥穂のパーティが天狗沢を下ってきた。そして落石の嵐。

天狗のコル。岳沢方面の矢印があるがここを安易に下るのは危険

天狗沢の下降はジグザグではなく、沢に入って直ぐ左のスラブに沿って下り、ある程度の幅になってからペイントを目印に下るとそこまで悪くはないが、後続の方々はまっすぐに降りてきたため、ガラガラと連続して落石が起こる。

天狗沢への下降。写真では分かりづらいがガレガレ。写真の左側の壁に沿って降りるのが正解。真ん中や右を下ってはいけない。

ひたすらガレガレの沢を下り、岳沢小屋についたのが 14:35 くらい。少し休憩した後、上高地のゲートの時間もあるのでテントを撤収して下山を急ぐ。

大分下ってもうすぐ分岐かなというところ、木道が続き、左右はクマザサが茂るあたりで不審な糞を連続して見かける。どうもクマの糞のようで急に後が怖くなり進む速度が速くなった。なんとか無事に上高地に下山(16:10)。

上高地BTでバス待ちの列を見た我々、即座にタクシーにしましょう、とブルジョワ下山を決めました。

下山後のお風呂は梓湖畔の湯(750円)へ。身体がさっぱりした後、胃袋もさっぱりさせましょうと定番の十字路へ。十字路、平常運転の人員不足で席は空いてるけど待ち行列がドア外にまで出ていたので諦めてレストランポムへ。A田さん、糖分に餓えていたのか、白身魚のフライ定食に加え、カシスシャーベットを食す。

あとは帰宅するだけですが、最後の核心部、小仏トンネルの渋滞。これもI井さんのエクストレイルについてる自動運転で難なくクリア。自動運転サイコ〜(笑

今回の山行を総括して。
無雪期の奥穂南稜自体は技術的には簡単なルートではあるが、ルートをミスると面倒なことになるためその辺りは注意が必要。後続パーティがいる場合は落石は厳禁。先行パーティからの落石にも要注意。ロープ(20m)は持参した方が良いが、パーティの技量が揃っており、且つ、コンディションが良ければ使う箇所はない。岳沢以降は水場がないため、真夏は各自2L以上は必要。

文:U島